第2回脳腫瘍支持療法研究学術集会

会長挨拶

日本脳腫瘍学会 第2回脳腫瘍支持療法研究学術集会
会長 辻󠄀 哲也

(慶應義塾大学医学部リハビリテーション医学教室)

 日本脳腫瘍学会は、脳腫瘍に関する基礎・臨床研究の推進、普及に貢献し、社会福祉の増進に寄与することを目的として、2002 年に創設されました。学術集会では、悪性脳腫瘍の遺伝子解析やバイオロジーなどの基礎研究や新規治療薬の開発について、参加者約500人が合宿形式で朝から深夜まで議論が行われますが、脳腫瘍患者さん・ご家族を含めた介護者の心の問題や支持療法(サポーティブケア)について議論する時間は十分とはいえません。

 悪性脳腫瘍の患者さんは、身体的麻痺や失語・意識障害が進行する可能性があり、治療の早期から様々な支援が必要です。特に膠芽腫などは短期間に病態が悪化するため、精神的なサポートや支持療法の開発が重要と考え、日本脳腫瘍学会の主な会員である脳神経外科医とともに、リハビリテーション科医・精神科医・心療内科医・看護師・研究者など多職種の医療関係者に加え、JBTA 脳腫瘍ネットワークの患者会にも参加をしていただき、2022 年5月に脳腫瘍支持療法委員会が発足しました。同委員会では、脳腫瘍に関わる多職種による診療・研究・教育を通じて、脳腫瘍の患者・介護者の悩み・診療上の問題点を明らかにし、さらには脳腫瘍の患者さんの症状緩和・リハビリテーション・就労支援やACP(Advance Care Planning)の検討を支援し、QOL(Quality of life)を向上させるための支持療法を科学的に確立することを目的としています。

 脳腫瘍支持療法委員会では、年に1度、研究会を企画、開催しています。第1回研究会は同委員会の成田委員長が会長を務め、「脳腫瘍患者のニーズとサポート」をテーマに、2023年7月22日に開催しました。300名余りの多職種のメディカルスタッフが参集し、朝から夜まで熱い議論が交わされ、脳腫瘍患者ケアに関して多面的に議論する貴重な機会となりました。

 このたび、2024年9月29日に、慶應義塾大学 三田キャンパスにて、第2回脳腫瘍支持療法研究学術集会を開催することとなりました。「多職種チーム医療の実践~その人らしさを大切に」をテーマとして、脳腫瘍の支持・緩和医療に関する様々な基礎・臨床研究や実際の臨床面での課題を取り上げていきたいと考えています。

 病院では、患者さんが早く回復するよう、また一日でも、その人らしく過ごせるよう、多職種の医療スタッフがチーム一丸となって診療に励んでいますが、それぞれの職種が異なる学会で発表することがほとんどで、医療者間での学問的な交流・指導は十分とは言えません。本研究会が、脳腫瘍に携わる学際領域の多彩な専門家が全国から集まり、活発な意見交換や議論を交わす場として機能することで、脳腫瘍に関する研究の発展や診療の質の向上の一助となり、脳腫瘍患者さん・ご家族を含む介護者の方の療養生活の質の向上がもたらされることを期待しています。

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